Studies
高密度QCDの探索
高密度下でのQCD
量子色力学(QCD)によって記述される強い相互作用のもたらす相構造の研究は、 クォークが自由度を獲得するクォーク・グルーオン・プラズマ相の探索や高密度物質である中性子星の研究などを中心に、 近年の原子核物理の重要な課題のひとつです。特に、中性子星合体からの重力波の検出と共に、高密度を持つ媒質の研究に大きな注目が集まっています。 中でも、高密度において、高温にて発見されたクォーク・グルーオン・プラズマ相と同様なクォーク物質が存在するのか、存在するとすれば、その性質はどのようなものか、 というのは、大きな謎のままです。本研究室では、その謎を解き明かすべく、ドイツで行われているCBM実験に参加しています。
実験方法
有限密度を持つQCD媒質の研究は、QCD Lattice計算による第一原理計算が難しく、観測・実験による研究が重要視される分野です。 特に、有限密度方向で、クォーク相からハドロン相へと転移する過程に関する実験的知見は貧しく、新たな実験的研究が渇望されています。。 クォーク相からハドロン相への転移に際しては、“QCD真空”への反クォーク・クォーク凝縮が生じカイラル対称性の自発的な破れを生み出しますが、 相の変化をとらえるためには、媒質中の反クォーク・クォーク凝縮量の測定が非常に重要です。 この反クォーク・クォーク凝縮量は観測量ではないため、我々の研究室では、これと直接的なつながりを持つベクトル中間子の質量分布の測定を行うことで、 高密度QCD媒質におけるカイラル対称性の回復現象を世界で初めて明らかにすることを目指しています。 具体的には。ドイツFAIR研究所のCBM実験装置を用いて測定を行うことを計画しています。 FAIR加速器及びCBM実験装置は、現在、国際協力により建設が進められている段階で、当研究室では、シリコンストリップ検出器の開発に参画しています。 今年度から来年度にかけて検出器の建設が本格的に始動する予定です。